PROJECT STORY
PROFILE
中嶋 輝雄
Nakajima Teruo
1993年卒業
技術企画部 技術企画グループ
工学部 機械工学科卒
INTRODUCTION
地球規模で増加し続ける温室効果ガスの影響による地球温暖化対策として、世界的に省エネルギーの取組は喫緊の課題となっている。日本では1970年代のオイルショックを契機に省エネルギーを推進してきたが、2011年の東日本大震災による節電要請を受け、電力・エネルギーに関する社会的関心はさらに高まり、省エネ関連機器に対する投資も拡大してきた。今後は、エコチューニングのような運用改善による「省エネ・省コスト・省CO2」を実現するエネルギーマネジメントも期待されている。
関電ファシリティーズは、基幹とするビルメンテナンス事業において、「省エネ・省コスト・省CO2」へのニーズや課題への対応、競争力の強化という観点から、エネルギーマネジメントに力を注いでいる。お客さまに対し、省エネ対策に向けたエネルギー診断、運用改善提案、システム提案など、幅広いエネルギーマネジメントへの取り組みを展開している。
ここで大きな強みとなっているのが、関電グループならではのノウハウだ。この強みを最大限に活かすことにより、高度な提案力を発揮。その結果として築き上げた実績がさらなる信頼を生み、次の受注へとつながるという、好循環を引き出している。
施設管理を請け負っている京都PHPビルが竣工15年を経過し、空調設備の更新が課題に--。2013年4月、提案に向けての検討を開始。折しも、省エネ推進担当・中嶋が経済産業省による省エネ補助金制度募集の情報を入手していたことから、京都PHPビルのオーナーさまの了承のもと、補助金申請を前提とするプランの作成がスタート。完成したプランに基づき2014年3月に申請、6月に無事採択が決まり、9月に着工、2015年1月に工事を終えた。「グループの関西電力による強力なバックアップも奏功しました」と、中嶋。当初の想定より安価な費用で、空調設備の更新に加え、照明のLED化とエネルギーの見える化も実現。その後1年間の実績分析で、建物全体で22%ものエネルギー削減に成功したことが実証された。
中嶋は、翌2016年、さらに経済産業省の次世代エネルギー実証事業におけるネガワット取引実証事業への参画を主導。「エネルギーコストをよりスリム化し、デマンドレスポンスという、今後のエネルギーマネジメントの最前線のノウハウ構築も果たしました」。
プロジェクトの前段においては、補助金制度の審査に、採択されることが最大の課題となった。経済産業省の省エネ補助金制度の活用には、煩雑な手続きや、傾向を知って対策を講じるノウハウも必要で、ハードルは高い。中嶋は、現状分析、機種の選定、最適なシステムの検討、全体のエネルギー試算やコストシミュレーションという定石を踏み、工事費・機器費の1/3の補助金獲得が可能と判断。申請に向け、グループ内における補助金申請の先達・関西電力に協力を仰いだ。「照明のLED化やエネルギーの見える化も加えて目標削減率を上げるようにというアドバイスをもらいました」。
プランが固まってからも、現場との協働による膨大な書類づくりやオーナーさまも巻き込んでの経済産業省への対応など、申請のために大きな労力を費やした。それは同時に、全てがノウハウとなる貴重な体験でもあった。無事採択されて工事が始まってからも、申請書類づくりは続く。一例として、工事前、工事中、工事後の定点写真が膨大な数必要で、漏れなく誤りなく撮影を実施することが想像以上の難事であることを思い知った。
こうした努力は最後に大きく報われた。「工事の翌年の実績分析で想定を超える削減ができたことがわかってくると、オーナーさまがスタッフ一同を労ってくれました。入居テナントさまも、空調機器が一新されて快適になった上に電気代が安くなったと大喜び。その笑顔が、全ての苦労を忘れさせてくれました」。
次なる挑戦は、次世代エネルギー技術の一つとして話題のネガワット取引だ。需要家が電力会社と“電力逼迫時に要請に従い所定量の節電を行う”という契約を結び、その実績に応じて対価を得るネガワット取引は、2020年以降にスタートが予定されている。経済産業省は、次世代エネルギー技術実証事業として、ネガワット取引の試行を計画。需要家の参画を募っていた。これを知った中嶋は、即座にオーナーさまに参画を提案した。「われわれにとってはデマンド制御のノウハウを得る絶好のチャンスです。逆に節電できれば電気料金が下がるのとは別に規定の対価を得ることができるので、お客さまにとってもメリットがあります」。
空調設備更新の大成功で省エネへの取り組みに前向きになっていたオーナーさまは提案に賛同。ネガワット実証事業が始まった。もちろん、デマンドレスポンスは簡単ではない。たとえば、電力が逼迫する猛暑の中での節電は、ともすると「暑い」というテナントからのクレームを引き起こす。どこをどう節電すればクレームなしに目標値をクリアできるのか。試行錯誤の中からノウハウを積み重ね、最終的に、一緒に参画した需要家の中でも高い達成率をマーク。1年間の実証を、成功裡に終えることができた。
こうしてプロジェクトは、補助金申請とデマンドレスポンスという価値あるノウハウの獲得による提案力の向上と、新たな成功実績を、エネルギーマネジメント活動にもたらした。二つのノウハウはその後多様な事例に応用され、新たな成功実績を生んでいる。
「われわれは単なるビル管理会社ではありません。エネルギーマネジメントを基軸に施設の現状分析、提案、改善、見直しを継続させて、「省エネ・省コスト・省CO2」と建物資産価値の向上を実現します。これからも、積極的なチャレンジによりお客さまに喜んでいただくとともに、社会への貢献に努めていきます」。